勇者ミーコの冒険 #51(2017/05/31)

ミーコとルンタは道を歩いていた。

ミーコ「さて、はいたつのネコはどこにいるのかな?」



ルンタ「あのネコがそうじゃない?」



ミーコ「きっとそうだ! もしもーし」

ルンタ「こんにちはー」

配達員チャッピー「…」

ミーコ「あれっ? 無視?」

ルンタ「あのー?」

配チャ「えっ。あっすいません。考えごとをしていたもので…」



ミーコ「考えごと?」

配チャ「はい。あまりにも深く考えていたので、おふたりに気づきませんでした」

ミーコ「そんなに深く、なにを考えていたの?」

配チャ「はい、あの、なぜ世の中のネコたちは手紙を書かないのだろうかと…」

ルンタ「まあ」

配チャ「たとえば、あなたは手紙を書きますか?」

ミーコ「ミーコ手紙なんて書いたことないよ」

ルンタ「ルンちゃんも」

配チャ「なぜ書かないのでしょう」

ミーコ「さあ?」

ルンタ「書こうと思ったことがないわ」

配チャ「なぜ書こうと思わないのでしょう」

ミーコ「なんでかな?」

ルンタ「考えてみたこともないわ」

配チャ「うーん。やっぱりみんなスマホを使うからですかね」

ミーコ「スマホ?」

配チャ「はっ。手紙を書くネコの少なさにうろたえるあまり、変なことを口走ってしまいました。いえ、あのですね、たとえばある町から別の町に、手紙をはこぶとするでしょう」

ミーコ「うん」

配チャ「1通はこぶのと、10通はこぶので、手間はたいしてかわりません」

ルンタ「そうね」

配チャ「でも10通はこべば、しゅうえきは10倍です」

ミーコ「ふんふん」

配チャ「だからぼくは、みんなにもっと手紙を書いてもらいたいんです」

ルンタ「なるほどー」

配チャ「なのになぜ、みんな書いてくれないのでしょう」

なぜネコは手紙を書かないのか。つづく。
勇者ミーコの冒険 #52(2017/06/01)

配達員チャッピーは、ネコが手紙を書かない現状に憂いを抱いていた。

ミーコ「手紙ねえ」



ルンタ「書かないわよねえ」



配達員チャッピー「なぜネコは手紙を書かないのか。ぼくは深く深く考えました」



ミーコ「うん」

配チャ「もしかすると、書きたいけど書きかたがわからないのではないか。そう思いいたり、こんな本をつくりました」



配チャ「手紙の書き出し、しめのことばのていけい句にはじまり、時候のあいさつや、さまざまなシチュエーションでつかえる各種文例をまとめています」

ミーコ「へえー」

配チャ「さらには、相手が先ぱいか、後はいか、あるいはとりひき先のえらいネコかなど、状況におうじた文体の使い分けについてもくわしくかいせつしています」

ミーコ「手紙ってけっこうめんどうなんだね」

ルンタ「でも、そういうもんだいなのかしら?」

配チャ「そこです。たしかに、そういうもんだいではないのかもしれません。ぼくはさらに深く考えて、そもそもみんな字が書けないのではないか、と思いいたり、こんな本もつくりました」



配チャ「これをよめばあなたでも字が書けるようになりますよ」

ミーコ「しつれいね。ミーコは字くらい書けるわよ!」

配チャ「えっ。あなた、字が書けるのに、なんで手紙を書かないんですか?!」

ミーコ「なんでって。べつに書くひつようないし」

配チャ「ともだちがいないとか」

ミーコ「しつれいね! いるわよ!」

配チャ「やっぱり書きかたがわからないのでは」

ミーコ「そういうもんだいじゃなくて!」

配チャ「この本をよめば…」

ミーコ「だから、そんな本よんだって、手紙書くネコなんていないって!」

配チャ「そうですか…。だめですか…」しょんぼり

ルンタ「あらら…」

ミーコ「えっ。あの」

ミーコ「えっと!」

ルンタ「えーと?」

ミーコ「そうだ! ミーコお手紙書くわ! なんかとつぜん書きたくなってきた!」

ルンタ「ルンちゃんもー」

配チャ「ほんとですか!?」

ミーコ「うん! えーと、そうね、故郷の村のマーボ王に手紙を書こうっと!」

ルンタ「じゃあルンちゃんは、ミーコちゃんの故郷のルナさんに書くわ。ルナさんはルンちゃんの生き別れたおねえさんかもしれないし!」

ミーコとルンタは手紙を書くことにした。つづく。
勇者ミーコの冒険 #53(2017/06/02)

配達員チャッピーのために手紙を書くことにしたミーコとルンタ。

配達員チャッピー「ありがとうございます! じゃあここに紙とえんぴつがあるので!」



ミーコ「ハーイ。よし、書くわよ!」



ルンタ「ルンちゃんもー」



ミーコ「えーと。こんな感じかな?」かきかき

ルンタ「…」かきかき

ルンタ「書けたわ!」

ミーコ「どれどれみせてー」

ルンタ「はい」



ミーコ「わあ。ルンちゃんたっぴつだねー」

ルンタ「ルンちゃん、じこしょうかいしてみたわ」

ミーコ「うんうん。これならルンちゃんのことがよくわかるね!」

ルンタ「ミーコちゃんはなんて書いたの?」

ミーコ「こうよ」



ルンタ「これはなんて書いてあるの?」

ミーコ「これはね、ミーコは元気です。旅は楽しいです。っていう意味よ」

ルンタ「まあ。とてもわかりやすいわね!」

配チャ「書けましたか? ではこのふうとうに入れてと。あて先は、ミーコさんの故郷の村ですね」

ミーコ「うん」

ルンタ「よろしくー」

配チャ「はい。たしかにおあずかりしました!」

手紙を書き終えたミーコとルンタ。つづく。
勇者ミーコの冒険 #54(2017/06/05)

ミーコとルンタは手紙を配達員チャッピーに渡した。

ミーコ「ミンミン、はじめてにしてはじょうずに手紙が書けたわ!」



ルンタ「手紙はどのくらいでとどくの?」



配達員チャッピー「そうですねえ。予備配達員の誰かがたまたまミーコさんの故郷の村のほうに行くときがあれば、持っていってもらえるので、まあ、1か月くらいみていただければ…」



※予備配達員: 配達員に必要とされる訓練を受けた一般のネコたちが、自らの都合に応じて配達を請け負う制度、および、その制度にのっとって活動する非常勤の配達員を指す。

ミーコ「えっ。でもこのチラシには3日でとどくって」



配チャ「ああ、これはとかい行きの場合ですよ。とかいはとおいけど、船便があるのでかえってはやいんです」

ルンタ「船便?」

ミーコ「それってもしや」

配チャ「なにしろ、たまたま船が出るのにタイミングがあえば、とかいまでたかだか3時間ですからね」

ミーコ「3時間?! そんなにはやいんだ?」

ルンタ「その船はどこから出ているの?」

配チャ「この先にあるしんがし川のふなつき場です」

ミーコ「どうやって行けばいいのかしら」

配チャ「ここからそんなにとおくないです。手紙を書いていただいたお礼に、ぼくがごあんないしましょう」

ミーコ「ほんと?」

ルンタ「たすかるわ」

いよいよ船着き場の場所がわかりそうだ。つづく。
勇者ミーコの冒険 #55(2017/06/06)

ミーコとルンタは配達員チャッピーの案内で船着き場にむかっていた。

ミーコ「それにしても配達員さんって、あたしの故郷のチャッピーによく似ているわね」



配達員チャッピー「いやいやこんなのよくある柄ですよ」



ルンタ「シロネコ郵急便っていうから、てっきり白猫がはいたつしているのかと思ったわ」



配チャ「マボリッチ王にあやかって、なまえにシロネコってつけたんです。配達員はいろいろですよ。黒猫もいます」

ミーコ「そうなんだー」

配チャ「っと、つきました。あそこにみえるのがふなつき場です。ではぼくはこれで!」

ミーコ「ハーイ。バイバーイ!」

ルンタ「ありがとー!」

ミーコ「どうやらこれが、詩人のお兄さんの言っていた場所のようね」

ルンタ「でも誰もいないわ。船はいつ出るのかしら」

ミーコ「そこの小屋に誰かいるかな?」

ルンタ「みてみましょう」

ミーコ「もしもーし」

ルンタ「こんにちはー」

船頭チャッピー「はい? なんでしょう」



ミーコ「あのー。船にのりたいんだけど」

ルンタ「いつ出るの?」

船チャ「あー…」

ミーコ「どうしたの?」

船チャ「船はとうぶん出せません…」

ミーコ「なんですって! どういうことなの」

船チャ「みてください。雨がぜんぜんふらないので、川の水がすっかりへってしまって。これでは船をうかべられません」

ミーコ「えー!」

ルンタ「まあ」

ミーコ「じゃあとかいに行けないの?」

船チャ「雨がふらないことにはどうにも…」

ミーコ「ええー。どうしよう」

途方にくれるミーコ。つづく。
勇者ミーコの冒険 #56(2017/06/07)

川の減水により、都会に行く船は止まっていた。

ミーコ「ふなつき場をみつけたはいいけど、川に水がないというのはもうてんだったわ」



ルンタ「そんなことがあるのね」



船頭チャッピー「まったく、このまま雨がふらなければ商売あがったりです」



ミーコ「こまったねー」

ルンタ「でもルンちゃんしってるわ。こういうのをつるせばいいのよ」



船チャ「それはてるてるぼうずといって、むしろ雨がふらないようにするおまじない…」

ミーコ「あれルンちゃん。そのポーチにぶらさがってるストラップはなに?」



ルンタ「え? ああそうそう、前に台風にあったとき、雨はもうこりごりだと思ってこれをつるしたのよ」

船チャ「雨がイヤでそれをつるしたってことは、お客さんちゃんとわかってるんですよね」

ミーコ「そんなのがぶらさがってるのがいけないんじゃない?」

ルンタ「そうねえ、はずしましょ」

ミーコ「これで雨がふるねー」

船チャ「はは。そんなわけが」

ゴロゴロゴロゴロ…

船チャ「えっ!」

ミーコ「かみなりきたっ!」

ルンタ「まあ」

船チャ「まさかそんなことが!」

ミーコ「これで川に水がたまるねー」

ルンタ「そうねー」

なんと、雨が降り出した。つづく。
勇者ミーコの冒険 #57(2017/06/08)

雨は一週間降り続いた。

船頭チャッピー「そろそろ川にじゅうぶんな水がたまったころですね」



ミーコ「雨ばっかりでもううんざりしてきたよー」



ルンタ「じゃあ、このてるてるぼうずをもういちどぶらさげて…」



船チャ「それで雨がやみますかねえ」

ミーコ「あっ、空があかるくなってきたよ」

船チャ「えっ!」

ミーコ「晴れてきた!」

ルンタ「まあ」

船チャ「すごい。こんなのはぼくの船頭じんせいではじめてです。奇跡だ…」

ミーコ「これで船が出せるかな?」

船チャ「そうだ! 船出だ!」

ミーコ「やったー!!」

ルンタ「うきうきするわね!」

船チャ「こちらです。どうぞー!」

ミーコ「ミーコ船にのるのはじめてだよ!」

ルンタ「ルンちゃんもー」

船チャ「波よーし。風よーし。船体いじょうなし。乗客はぜんいん、ライフジャケットを着用してください。では出航します!」

ルンタ「いよいよねー!」

ミーコ「わーい!」

船が都会にむかって出発した。つづく。
勇者ミーコの冒険 #58(2017/06/09)

船に乗って川をくだり、都会へむかうネコたち。

ミーコ「(うとうと)」

ルンタ「(うとうと)」

船頭チャッピー「はい、つきました!」



ミーコ「えっ」



ルンタ「えっ」



船チャ「よくおやすみでしたね」

ミーコ「しまった。川岸のけしきを楽しもうとおもっていたのに、あまりにも気持ちがいいのでねむってしまったわ!」

ルンタ「ルンちゃんもー」

船チャ「かいてきな船旅をたんのうしていただけたようでなによりです!」

ミーコ「とかいについたの?」

船チャ「そうですよ。みてください」



ルンタ「ウエルカム・トゥー・トーキョー2020?」

船チャ「あれはトーキョー・ニャオニャオってよむんです。なんでも、60年に一度のおおきなおまつりなんだとか」

ミーコ「へえー」

船チャ「ぼくもみに行きたいですが、仕事がありますのでね」

ミーコ「そっかぁ。ざんねんだね」

船チャ「ではお客さん、とかいを楽しんできてくださいね!」

ミーコ「ハーイ!」

ルンタ「ありがとー!」

ミーコ「バイバーイ!」

ついに都会の地に降り立ったミーコとルンタ。つづく。
勇者ミーコの冒険 #59(2017/06/19)

ミーコとルンタは周囲を眺めてみた。



ミーコ「とかいはきゅうくつで忙しげなところだと思ってたけど…」



ルンタ「けっこうのどかね」



ミーコ「うん。あそこのベンチでおじいさんネコと、その孫とおぼしきネコがひなたぼっこをしているよ」

ルンタ「牧歌的なふうけいねー」

おじいさん「おやおや、これは。旅のおかたかな」



孫チャッピー「こんにちは」



ミーコ「こんにちは」

ルンタ「いいお天気ですね」

おじい「気持ちがいいのう。旅にも、ひなたぼっこにも、塔にのぼるのにも、さいてきな天気じゃ」

ミーコ「塔?」

孫チャ「あれだよ!」

ミーコ「あっ。丘の上こうえんでみた塔が、こんな近くに!」

ルンタ「近くでみると、ものすごいおおきさね」

おじい「そうじゃろうそうじゃろう」

孫チャ「すごいでしょー。あれは世界一高いセカイツリーっていうんだよ!」

ミーコ「ほんとうにすごい高さだわ!」

ルンタ「あれにのぼれるの?」

おじい「もちろんじゃ。わしゃのぼったことはないがな。としをとって高いところがめっきり苦手になってのう」

孫チャ「ぼくもまだのぼってないけど、おおきくなったらのぼるんだ!」

ミーコ「キケンはないのかしら」

おじい「ふむ。知り合いがのぼったんじゃが、出てきたときには手持ちの財産をすべてうしなっていたそうじゃ」

ルンタ「やっぱりあぶないところなのね」

おじい「そうじゃのう。あの塔にはどうも不可解なところがあるのじゃ」

ミーコ「ふかかい?」

おじい「わしらはここでひなたぼっこをするのが日課なのじゃが、あるときふと気がついたら、いつのまにかあれがたっておったのじゃよ」

孫チャ「魔法みたいだよね!」

ルンタ「まあ」

おじい「キツネにつままれたとはこのことじゃな。しかしあれができてから、かんこう客もふえての。ちいきがにぎわうのはよいことじゃ」

孫チャ「かっせいか、ってやつだよね!」

ミーコ「人気スポットなのね」

おじい「おふたりも、せっかくとおくから来なさったのじゃ。行かれるがよいぞ」

ルンタ「そうねえ」

ミーコ「行ってみようか」

ミーコとルンタは塔へむかうことにした。つづく。
勇者ミーコの冒険 #60(2017/06/22)

ミーコとルンタは塔の話をしながら歩いていた。

ミーコ「気がついたらたっていたなんて、不思議な話ね」



ルンタ「ルンちゃんそういうのしってるわ。庭に豆をすてたら、つぎの日には大木になっていたのよ」



ミーコ「えっほんと!?」

ルンタ「その木をてっぺんまでのぼると、まものがいて、たからものがあるのよ」

ミーコ「えっそれってもしかして、まかいじゃない?」

ルンタ「え? どうかしら」

ミーコ「だって、まものがいて、たからものがあるなんて、そんなのまかい以外に考えられないよ!」

ルンタ「言われてみれば…」

ミーコ「うん、ミーコの勘がつげているわ! あの塔のてっぺんに、まかいへの入り口があるにちがいない!」

ルンタ「まあ。話が急展開したわね」

ミーコ「よし! ルンちゃんあの塔をこうりゃくするわよ」

ルンタ「でもわたしたち、レベル足りてるのかしら?」

ミーコ「レベルだのシャベルだの、バーベルだのなくたって、ミンミンは勇者だからだいじょうぶよ!」

ルンタ「魔界のとびらをひらくカギも、ないんじゃないっけ」

ミーコ「なんとかなるよ! とうぞくもそう言ってたし」

ルンタ「そうねえ。まあ、ミーコちゃんにまかせたわよ」

ミーコ「よーし。ここで一気にかたをつけるよ!」

ルンタ「がんばってー」

大いに盛り上がるミーコであった。つづく。


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